歴史ある伝統にそれぞれの個性を
今月は高岡市立川原小学校6年生のものづくり・デザイン科「銅器製作体験」を紹介します。富山県の歴史ある「伝統工芸」を肌で感じて、興味を持ち、受け継ぐ気持ちが芽生えて欲しい、一つの仕事として見るきっかけになればという思いから、川原小では学校の近くにある「中村美術工芸」の中村さんのご協力を得て、十数年に渡り「銅器製作体験」が行われています。
子供たちは銅パネルか銅鐸を選び、製作に入りました。完成までの4つの工程「鋳型作り」「砂型作り」「金吹き」「色付け」を4日間に分けて行い、今回は「金吹き(型に溶かした銅を流し、固まった作品を取り出す作業)」を取材しました。
先生にお話を伺ったところ、みんな「ものづくり」が好きで体験をとても楽しみにしていたそうです。
まずは表型と裏型に仕上がりをきれいにするための液体を丁寧に塗っていきます。この作業には完成品の焼付き(表面が剥がれる)を防ぎ、表面を美しく滑らかに仕上げる効果があるそうです。はじめは恐る恐る…という感じでしたが、慣れてくると絵の具を塗るようにスムーズに作業していました。
塗り終えたら、表型・裏型を合わせて針金で固定し、銅を流し込む作業です。溶鉱炉の側に移動し、中村さんがブロンズ(青銅)と真鍮(黄銅)を主とした金属を溶解炉で溶かし、液体化させていきます。溶鉱炉の温度は1,200℃を超え、子供たちは離れていても感じる熱気に「熱い!」と思わず声を出していました。
子供たちは、熱された銅を型に流し込む迫力に「おーっ!」「すごい!」と歓声を上げ、興奮を隠せない様子で、安全な距離を保ちながらも前かがみになり、職人さんの姿を熱心に観察していました。
熱が冷めて銅が固まるまで、中村さんの話をしっかり聞きながらも、仕上がりを早く見たくてたまらない様子。針金を切り、ハンマーで銅器を傷つけないよう、型を外していきます。
思い通りの仕上がりにみんな大満足! 一人ひとりの個性が生きた銅器を自慢げに見せてくれました。次回の体験で色付けを行い、ついに「世界に一つだけの銅器」の完成です。完成した作品は学校に飾られます。