認知的発達とは物事をどのように理解し、判断し、論理を立てるかという思考を司る知的機能のこと。心理学的には、思考に関連する物事の想像・推論・決定・記憶といった知覚の部分が当てはまります。
認知発達心理の権威であるピアジェ博士は「認知発達段階理論」の中で、認知的発達を4つの段階に分けて解説しています。
段階 |
特徴 |
感覚運動期
(0~2歳) |
自分が動いてその結果何が起こるかという関係性を学ぶ時期 |
前操作期
(2~7歳) |
自己中心的で、見た目の印象に左右される時期 |
具体的操作期
(7~11歳) |
脱中心化、保存の概念が発達する時期 |
形式的操作期
(11歳~) |
大人の思考形態に達する時期。抽象的な論理思考が可能に |
人間は、脳の発達によって思考のスキルや判断力がレベルアップしていきます。小学高学年から中学生くらいであればほぼ大人の脳に近づいている状態ですが、「具体的操作期」である9~10歳の子どもはちょうどその移行過程に当たります。人間の成長において大きな転換期となる大事な時期で、具体的・主観的な考え方から少しずつ抽象的・客観的な考え方ができるようになっていきます。
「前操作期」までの時期と違った視点を手に入れつつあることで、劣等感や他者へのネガティブな意識の包含、学校の勉強も急に難しくなる時期であるため学習のつまずきなどさまざまな“壁”を感じることになるのです。
では、なぜ認知発達が“壁”につながるのか。詳しく解説しましょう。
学習のつまずき
小学3~4年生というと、学校の授業が“お勉強”から“学習”に変わる時期。点数や成績で顕著に評価されることが増え、学習の難易度も上がるため子ども間の差がつきやすい時期になります。
中でも算数は土台が肝心で、一度つまずくとそれが積み重なってしまいやすい教科。九九を理解していなければ二桁以上のかけ算や少数、分数の計算も理解できなくなってしまいます。
劣等感と他者へのネガティブな意識
物事をいろいろな視点で考えられるようになるため、良くも悪くも比較ができるようになります。例えば「他の子よりも自分はできるかも」と感じる経験があればそれは優越感になりますが、逆であれば劣等感になりますよね。
他者を悪く言うのは劣等感を抱いた時に自分を守るため、あるいは自分の正当性を強めるためであることも多いでしょう。
ドイツ語に“シャーデンフロイデ”という言葉があります。簡単にいうと“他人の不幸は蜜の味”という意味になりますが、他者と自分を比べる目線を手に入れるこの時期に入ると、こういった意識が現れ始めます。仲間意識を強めるため、あるいは自分が仲間外れにされないために誰かを仲間外れにすることも…。仲間外れはある意味、悪い方に出た自己防衛でもあるのです。
学校では、クラスの雰囲気や団結力が仲間外れの発生に比例しているといわれています。悪口が起こりやすいのはクラスのバランスが崩れている場合。例えば先生が極端に権威的だったり、逆に先生が極端に弱かったり。子ども一人ひとりも大切ですが、クラス全体のハーモニーが大事になってくるので先生の役割も大きく影響します。もちろん、家庭でも同じことがいえます。親が文句ばかり言う家庭の子は、やはり不平不満が多くなるもの。ネガティブな意識を芽生えさせたり強めたりさせないためにも、子どもの前での会話や発言には注意した方が良いでしょう。
反抗的な態度やウソをつく
ピアジェの認知発達段階の中でも、7~11歳は認知の飛躍が著しい時期です。話術が巧みになり他者の目線を手に入れることによって、親からすると「口答えが一丁前だな」と感じることが増え、子どものうそがだんだんと巧みになってくる時期でもあります。
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