「ICT教育」。聞いたことはあるけれど、どんな教育なのか、具体的にイメージできる人は少ないのではないでしょうか。今、学校現場では、急速にICT教育の導入が進んでいます。ICT教育の意味やメリット、問題点、自治体での導入事例を紹介します。
ICT教育とは、「情報通信技術」を用いた教育
ICT教育の「ICT」とは、「Information and Communication Technology」の略で、「情報通信技術」のこと。ICT教育とは、「パソコンやタブレット端末、インターネットなどを用いた教育」を意味します。
たとえば、
- 学校にあるパソコン教室で、インターネットで調べ学習をする。
- パソコンやタブレットを使って授業を行う。
- 教室にあるプロジェクタに図表などを投影して授業を行う。
- 生徒がタブレットで作った内容を、瞬時にクラス全員の端末で共有する。
などが、ICT教育の一例です。
ICT教育は、ICTを活用することにより、「教員が生徒に向かって一方的に教え、生徒はそれを聞き、黒板をみてノートをとる」といった、従来の“詰め込み式、受け身型”の教育からの脱却を図ることができます。
また、動画やアニメなどのコンテンツを効果的に使うことで生徒の視角や聴覚により訴えかけることができ、「学びへの意欲や関心が高まりやすい」という特徴があげられます。
現代は、デジタル化の加速により、知りたい情報や必要な情報はすぐにインターネットで手に入れられるようになりました。これからの時代を生きる子どもたちに大切なのは、あふれる情報の中から必要なものを主体的に選び取る「情報活用能力」や「創造力」と言われています。
質のよいICT教育により、これらの能力を育むことも期待されています。
ICT教育のメリットと問題点
ICT教育のメリットは、以下の3つです。
生徒の興味を引きつける授業ができる
映像やアニメ、音楽なども利用しながら多角的に授業の展開ができるため、生徒の興味関心をひきつけることができます。
板書の手間が省けるなど学習時間を効率良く使える
電子黒板などを利用すれば、たとえば算数の授業の時に、教員は図形データを用いることで板書の手間が省け、それを各生徒のタブレットに送信することで、生徒も板書の手間が省けます。板書の時間を効率化できるぶん、その時間を思考力や創造力を深める活動にあてられます。
生徒一人ひとりに応じた学びの提案が可能に
専門アプリやコンテンツの利用により、教員の管理画面で、クラス全員の学習の進行状況やどこでつまづいているかなどが一度に可視化できるため、生徒に合う学習を提案できます。
一方で、以下のような問題点も指摘されています。
ICT機器の故障対応など、管理が負担になることも
授業中にタブレットを使っていてフリーズするなどの不具合が出た場合、その対処に時間がさかれるなど、ネット環境の管理が負担になることもあります。
教員のITリテラシーの格差が授業に影響
ICT機器に苦手意識を持つ教員もいます。教員のITリテラシーの格差が、授業内容に影響することが懸念されています。
ICT教育環境に地域格差がある
文部科学省の調査によると、日本全国における普通教室の無線LAN整備率は、1位の静岡県が73,6%なのに対し、最下位の新潟県は13.3%。教育用コンピュータ1台当たりの生徒数は、1位の佐賀県が1.8人/台なのに対し、最下位の愛知県は、7.5人/台。これらの地域格差が、教育格差につながるのはないかという声もあります。
日本のICT教育は、世界から取り残されている
問題点はあるものの、教育の質の向上や、時代が求める新しい学びの実現に有効な手段であるICT教育。日本では、2010年以降、文部科学省を中心に、国をあげてICT教育の推進に取り組んできました。
しかし、2018年に行われたPISA(国際的な学習到達度に関する調査)のICT活用調査によると、授業中のICT機器使用時間は、北欧のスウェーデンやデンマークが上位にランクインするなか、日本はOECD加盟国の中で最下位。先進国であり、情報技術も発展していると思われがちな日本ですが、ICT教育については、残念ながら海外と比べて遅れている傾向にあります。
続きでは、ICT教育が進んでいる東京都・小金井市の場合をご紹介します。
全文は教育情報サイト「ソクラテスのたまご」でご覧ください。