世界7大教育法のひとつ、ドルトンプラン教育。日本ではあまり知られていませんが都内に新しい学校が設立されるなど、にわかに注目を集めています。
子どもの自主性を伸ばしたい家庭は注目のドルトンプラン教育の特徴やメリット、デメリット、国内にある学校まで詳しく解説します。
ドルトンプラン教育とは
生徒一人一人のやりたいことを軸に学習プランを作り、生徒の自主性を伸ばしつつ、社会性や協調性をバランスよく学べる教育法として今や世界各地で知られているドルトンプラン教育。
その誕生の背景にはどんなことがあったのでしょうか。
ドルトンプラン教育が誕生した背景
ドルトンプラン教育が誕生したのは1920年代。アメリカの教育家ヘレン・パーカーストが提唱しました。
当時のアメリカでは全学年が同じクラスで学習する単級小学校が主流。そのため、彼女も学年の異なる40人の生徒を1人で教えていましたが、彼女は生徒一人ずつに個別の課題を与え、それぞれのペースに合わせて学習させていたそうです。
その経験の中で、個別学習の重要性を感じつつも、教師への負担が重すぎることを痛感していました。
よりよい教育法とは何かと模索する中、イタリアでモンテッソーリ教育を学習した彼女は、個別学習に力点を置きつつ、教員の負担が重すぎることを解消する独自の方法論を考案しました。
これが、生徒それぞれに最適な学習プランを提供し、自主的に学習を進められるドルトン教育法のはじまりです。
ちなみに、名前の由来は、彼女がこの方法論を考案し、実施したのがアメリカのマサチューセッツ州、ドルトンにある小学校だったことからなのだそうですよ。
大正時代の日本で広がる可能性もあった?
実は、大正時代の日本でもドルトンプラン教育は新教育運動の代表的な実践理論として紹介されていました。東京学芸大学の資料によると、ヘレン・パーカーストさんが4回にわたり来日講演をしていたという記録も残っています。
ほかにも、1922年には大正自由教育運動の末期に成城学園初等学校で「成城ダルトン・プラン」として導入されるなど実施もされていました。
しかし、日本全体が軍国主義に進んでいく中で、命令通りに動く兵隊を育成する教育がメインとなり、自由な発想を推奨するドルトンプラン教育は急速に衰退。以降、ドルトンプラン教育が日本に再び入ってくるには実に40年以上の歳月がかかりました。
ドルトンプラン教育の特徴とは
では、いよいよドルトンプラン教育とはどういう内容なのかを紐解いていきましょう。
ドルトンプランの教育方針は“自由”と“協働”というふたつの原理から成り立っています。
【原理1】自由の原理について
子どもたちの興味や関心ごとはそれぞれ違い、その子によって有効な学習法や進み方は異なります。
しかし、全員が同じペースで同じように学んでいく画一的な教育では、勉強についていけなくなる生徒、学習進度を落とさなければならない生徒が出るなどの不都合が出てきてしまいます。
【自由の原理】は、子どもたちは誰にも邪魔されることなく、自分の好きな分野の学習を自由に学べる機会を持つべきであるということであり、ドルトンプラン教育は、この原理に従い、目の前のことにじっくりと向き合う姿勢や持続する集中力などを育成していきます。
【原理2】協働の原理について
さまざまな年齢、個性、能力の子どもと交流する機会を設けることで、違った価値観の人ともスマートに交流できる人材を育成する原理のこと。
ダイバーシティが進む現代社会においてとても重要な意味があるように感じますよね。
そして、ドルトンプラン教育には、これらの原理を実現するための学習プランや空間、コミニティとして、“ハウス”、“アサインメント”、“ラボラトリー”の3つの柱が存在しています。
【3つの柱】ハウスについて
ハウスとは、一般的な学校でいうホームルームのことです。ただし、ドルトンプラン教育では、年齢やクラスの違う人たちが一緒に行うのが特徴。
また、担任はティーチャー(教える人)ではなく、あくまでハウスアドバイザー(助言者)という立場で、それぞれの学習をサポートしていきます。年齢や価値観を問わず、多様な人と行動を共にすることで、意見の違う人との話し合い方や大人との付き合い方が自然に身につけられます。
【3つの柱】アサインメントについて
生徒と教師との間で交わされる約束(契約)のこと。具体的には、それぞれの生徒に合わせた授業の方針や課題、レポートなどをまとめたものと考えてください。
子どもたちは、教師と一緒につくりあげた課題やレポートを期限通りに進めていくことを求められます。生徒に合わせた内容で学習意欲を引き出すだけでなく、時間の有意義な使い方や集中力、考える力を成長させることができます。
【3つの柱】ラボラトリーについて
ドルトンプラン教育がほかのオルタナティブ教育と比べて特徴的なのが、このラボラトリーであり、専門教科をさらに深めて学習していくために、担任だけでなく専門分野の教師にサポートしてもらいながらカリキュラムを進めていく場所のことです。
基本的に少人数制のため、集中した話し合いを行うことができ、徹底的に専門分野を研究していくことが可能です。
あくまで“個”に重点をおいて、専門家とともに興味があることを深めていくことができるドルトンプラン教育は、画一的な教育が当たり前といわれてきた保護者世代からすると少しうらやましく感じるほどではないでしょうか。
続きでは、ドルトンプランのメリット・デメリットや、ドルトンプラン教育を受けられる学校をご紹介します。
全文は教育情報サイト「ソクラテスのたまご」でご覧ください。