特別支援関係の教室は、似ている名前の施設や制度が多く、一度聞いただけではなかなか把握しづらいものです。
そんななか、障害やグレーゾーンで悩む保護者から聞くのが「学校や教育相談センターなどで教えてもらった『通級指導教室』が、どんなところか分からない」「検索して調べてはみたものの、よく分からなかった」という声。
文科省の調査によると、利用者が毎年増加傾向にあるという「通級指導教室」では、どんなことを行っており、対象となるのはどんな子なのかなど「通級指導教室」の基礎知識を分かりやすく解説します。
まずは、通級指導教室がどのようなところなのかということ、どんな子どもが対象なのかを紹介します。
通級指導教室とは?
通級指導教室(通級)とは、小・中学校に通う比較的障害の程度が軽い子どもが一人ひとりの障害に合わせた個別の指導を受ける教室のこと。通っている生徒は、通常学級のクラスに籍を置いているため、学校生活のほとんどは通常学級にいて、週に何時間かだけ通級指導教室へ通います。
子どもの困りごとに合わせて指導内容が異なるため、「ことばの教室」「きこえの教室」などの名称で、小中学校や特別支援学校に設置されています。在籍する学校にその子のニーズに合った通級指導教室が設置されていない場合は、近隣の他校に通うこともあります。
文部科学省の「平成29年度通級による指導実施状況調査結果について」によれば、設置されている学校数は、全国で6,051校あり、全国の約20%の学校に通級指導教室が設置されていることになります。
また、全国で108,946人の小中学生が通級による指導を受けており、この人数は毎年増加傾向にあることから通級指導教室の需要が高まっていることが分かります。
通級の対象となるのは、どんな子ども?
対象となる子どもは、学校教育法施行規則で以下のように定められています。
第百四十条 小学校、中学校若しくは義務教育学校又は中等教育学校の前期課程において、次の各号のいずれかに該当する児童又は生徒(特別支援学級の児童及び生徒を除く。)のうち当該障害に応じた特別の指導を行う必要があるものを教育する場合には、文部科学大臣が別に定めるところにより、第五十条第一項(第七十九条の六第一項において準用する場合を含む。)、第五十一条、第五十二条(第七十九条の六第一項において準用する場合を含む。)、第五十二条の三、第七十二条(第七十九条の六第二項及び第百八条第一項において準用する場合を含む。)、第七十三条、第七十四条(第七十九条の六第二項及び第百八条第一項において準用する場合を含む。)、第七十四条の三、第七十六条、第七十九条の五(第七十九条の十二において準用する場合を含む。)及び第百七条(第百十七条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、特別の教育課程によることができる。
一 言語障害者
二 自閉症者
三 情緒障害者
四 弱視者
五 難聴者
六 学習障害者
七 注意欠陥多動性障害者
八 その他障害のある者で、この条の規定により特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの
引用元:学校教育法施行規則|e-Gov
要約すると、通常の小中学校に通っていて、特別支援学級に在籍しておらず、障害に応じた特別の指導を行う必要がある生徒・児童が、通級指導教室の対象になります。
主な障害の種別としては、吃音などの言語障害や、弱視・難聴の子ども、そして発達障害(自閉症・ADHD・学習障害)や、選択性かん黙などの情緒障害をもつ子どもとなります。
重要なことは、通級指導教室は、勉強の遅れを補習するための場ではないということです。
周囲や子ども自身が、自分の特性を理解したり、得意な部分を生かして苦手なことを補うための具体的な方法を学ぶことで、学習上又は生活上の困難を和らげることが目的です。
そのため、たとえ障害があったとしても、適切な対処方法を子ども自身や周囲が理解していて、学校生活に困難を感じていなければ、通級指導教室に通う必要はありません。 逆に、学力は問題なかったとしても、感覚過敏などによって通常の教室でストレスを抱えているケースでは、通級指導教室を活用することで、学校生活の苦しさが和らぐケースもあります。
特別に指導を行う必要があるかどうかは、個々の子どもの状況によってケースバイケースです。多くの場合、保護者の意見を踏まえ、通級指導教室の担当者、臨床心理士、作業療法士などの専門家が総合的に通級が必要かを判断します。
そのため、子どもが学校において、学習面や生活面で困り感を抱えていると感じられる場合には、まず学校に相談するのがおすすめです。通常学級で適切な配慮をすれば問題が解決する場合もありますし、地域の実情を踏まえた通級指導の選択肢を教えてくれるでしょう。
続きでは、通級指導教室の指導内容や利用方法をご紹介します。
全文は教育情報サイト「ソクラテスのたまご」でご覧ください。