親子の悩み相談室第5回目となる今回は、「娘が嫌い」と悩み、自己嫌悪に陥っている母親からの相談に、トラウマに詳しい児童精神科医の前田佳宏先生が答えます。
「親子関係も人間関係のひとつなので、嫌いと感じても不自然ではない」と前田先生。「娘が嫌い」と感じてしまう原因を見つけ方や、親子関係を変えていく方法をお伝えします。
今回のお悩み
私は娘のことが嫌いです。どこが嫌いなのかと聞かれても分かりませんが、性格も合わないし、相性が悪いのではないかと思います。見ているとイライラして、抱きつかれるとゾクッとして嫌悪感でいっぱいになります。なぜ私は娘を愛せないんでしょうか。こんな自分も大嫌いです。
(小3娘の母)
娘を嫌いになるのは不自然なことではない
前提としてお伝えしたいのは、親子関係も人間関係のひとつだということ。独立した個々の人間同士の関係と考えれば、親が娘や息子に対して「嫌い」と感じてしまうことがあっても不自然ではありません。
つまり、親子関係でも相性の良し悪しはあるということを考えれば、相談に書いてある「相性が悪いのではないかと思います」という考え方も間違ってはいないのかもしれません。
しかし、相性はずっと悪いまま、嫌いなままで諦めるしかないわけではありません。今回は、親子関係を変えていくためにできることを紹介します。
親子関係にも関係する相性とは
相性とはつまるところ、それぞれの性格が合うか・合わないかです。
一般的に性格は”一生変わることのないもの”として考えられがちです。もともと人には素質と呼ばれるような、自分にとって心地よく行いやすい行動があります。
例えば内向的な傾向が強い子であれば、少人数で遊んだ方がみんなでワイワイガヤガヤ遊ぶも無理せず行いやすい可能性が高いでしょう。人は自分にとって苦でない行動を選択する傾向にあり、そうした行動を繰り返すことで行動パターンがある程度決まってきます。このように築かれた行動パターンが性格と呼ばれています。
性格はこれまで生きてきた行動によって培われたものであるからこそ、その行動を変化させることで変わっていきます。
例えば以前仲の良かった友達から、ちょっといじわるなことを言われて嫌な気持ちをずっと引きづっており、友達とのコミュニケーションが上手くいかない子がいたとしましょう。友達と関わろうと思っても「どうせまた仲良くなっても、嫌なことを言われるだけだ」といった考えが抜けず、似たようなことが起きた時に同じ反応が繰り返されることで性格は形成されるのです。
このように人と接する上で今の行動パターンしか知らない、あるいは取ってきた行動パターンが少ないために、コミュニケーションが上手く運んでいない可能性が考えられます。
そこで自分からあいさつをしたり、自分が話すのでなく相手の話に耳を傾けるなど、相手とのコミュニケーション方法を変えれば、相手の反応が変わり、今までとは異なった関係性を築けるかもしれません。
今までとは異なった関係性を他人と築けるようになると、親密な関係性が構築できたり、交友関係が多様化するなど変化が生じる可能性が高くなります。そうなれば、おのずと性格も変わっていくと私は考えています。
性格が変わる可能性があるということは、相性も変わる可能性が高いということです。
今は娘さんのことを嫌いと感じているかもしれませんが、相性が変わっていけば子どもに抱く感情も変わっていくような気がしませんか?
なぜ自分の子どもを嫌いと感じてしまうのか
また、今回の相談内容の中でも印象的なのが「なぜ私は娘を愛せないんでしょうか」という一文です。「嫌いだけど愛したい」という母親としての葛藤が痛く伝わってきます。
「なぜ愛せないのか」という問いの答えを知りたいのであれば、まずは「なぜ嫌いと感じてしまうのか」という理由を掘り下げてみましょう。
実は、嫌いと感じることは物事や言動に対する一つの反応に過ぎません。人にツバを吐かれたら反射的に「不快だ」と感じてしまうことと同じように、反射的に嫌いと感じてしまうには何かしらの原因があるはずです。
「ツバを吐かれても喜べ」といわれても難しいように、嫌いだと感じている何かを無理やり好きになるのは難しいことです。それよりも「ツバを吐かれないようにする」「ツバをよける」というように原因に対してアプローチをしていくことが大切です。
しかし、今回の相談内容からは嫌いの原因が子どもの言動にあるのか、それとも相談者さん自身の心の中にあるのかは判断できません。おそらく相談者さん自身も分かっていない可能性もありますね。
そこで、嫌いの原因を見つけていくコツを紹介しましょう。
リンク先では、娘が嫌いと感じてしまう原因を突き詰めていくコツや対処法をご紹介します。
全文は教育情報サイト「ソクラテスのたまご」でご覧ください。