新型コロナウイルスによる学校の休校期間中、10代のゲーム利用時間は大幅に増加したそうです。それをきっかけにゲームにはまってしまった小中学生の子どもたちも少なくないのではないでしょうか。
勉強以外の時間をゲームに費やすことが多くなり、朝から晩までゲーム画面とにらめっこしている姿に、「もしかしてうちの子はゲーム障害なんじゃないか・・・」と悩んでいる保護者の方も、たくさんいらっしゃるかもしれません。
日本は、ゲーム障害(ゲーム依存症)を専門とする医療機関が非常に少なく、他国と比べても対策が遅れているといわれています。
この記事では、国内で数少ないゲーム依存症やインターネット依存症に特化した回復支援サービスを行っている「MIRA-i(ミライ)」のゲーム障害専門公認心理師、森山沙耶先生に監修いただき、ゲーム障害(ゲーム依存症)の症状、その結果起こりうる問題といった基礎知識から、我が子がゲーム障害かどうかを診断チェックできるテスト、その予防・治療方法まで、幅広く、徹底的に解説していきます。
ゲーム障害とは? WHOが新たな疾病として定めた定義
そもそも、ゲーム障害(ゲーム依存症)とは、どういった状態のことを指すのでしょうか。
ゲーム障害は、世界保健機構(WHO)が2018年に国際疾病分類第11版(ICD-11)に追加、2019年に正式に承認し、2022年から発効される予定の 立派な“疾病”です。
ICD-11は、ゲーム障害のことを以下のように定義しています。
- ゲームのコントロールができない(開始、頻度、強度、時間、終了、前後関係)
- 他の生活上の関心や日常の活動よりゲームを優先する
- 問題が起きているにもかかわらずゲームを続けてしまう、またはエスカレートする
- ゲーム行動により、個人や家庭、社会、学業、仕事など生活に重大な支障をもたらすほどの重症度
引用:MIRA-iホームページ
以上のような状態がみられたとき、その人は“ゲーム障害”と認定されることになります。
つまり、ゲームで遊ぶ時間を自分でコントロールできなくなり、日常生活においてやらなければならないこともできなくなる状態になれば、ゲーム障害と診断される可能性があります。
恐ろしいことに、ゲーム障害は年々増加しているといわれています。
厚生労働省研究班の2017年の調査によると、中学生・高校生のおよそ93万人がネット依存の疑いがあると推計されました。
以下は、2019年に行われたゲーム障害に関する初の実態調査の結果を抜粋したものです。
「ゲーム障害」に関する初の実態調査で、10代・20代の18.3%が平日でも1日3時間以上をゲームに費やしていることが明らかになった。ゲームする時間が長い人ほど依存症傾向が強く、生活に支障を来たしたり、健康に影響が及んだりしている。調査は、厚生労働省の補助事業として国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県)が実施。全国から抽出した10~29歳9000人を対象とし、5100人から回答を得た。
過去12カ月にゲームをしたことがあったのは85%(男性92.6%、女性77.4%)で、使用する機器(複数回答)はスマートフォンが80.7%と最も多く、据え置き型ゲーム機48.3%、携帯型ゲーム機33.6%が続いた。ゲームをする場所(複数回答)は自宅が97.6%と圧倒的に多かった。
「ゲームをやめなければいけない時に、しばしばやめられなかったか?」の質問に対して、ゲーム時間が1時間未満の人は21.9%だったが、6時間以上の人は45.5%が「はい」と答えた。6時間以上の人の約3割は「ゲームのために、スポーツ、趣味、友だちや親戚と合うなどといった大切な活動に対する興味が著しく下がったと思う」としている。
引用:nippon.comより
ゲームをするのにスマートフォンを使用しているケースが8割以上という数字に、いかに昨今の子どもたちのあいだにスマートフォンが普及しているかが、見て取れます。
常に携帯していて気軽に使うことができるスマートフォンは、保護者が子どもと連絡を取りやすいという利点があり、持たせる家庭も多いでしょう。
しかしその反面、スマートフォンを通して、子どもたちはいつでもどこでも気軽にゲームで遊ぶことができます。
スマートフォンは非常に便利なアイテムですが、一歩間違えると、子どもたちをゲーム障害にしてしまう危険をはらんでいるのです。
そんななか、子どもたちをゲーム障害から守るため、前代未聞な条例を成立させた県があります。
香川県が成立した、“ネット・ゲーム依存症対策条例”についてご紹介しましょう。
下記は、その条例の一部抜粋です。
(子どものスマートフォン使用等の制限)
第18 条 保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、 各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等につい て、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行うものとする。
2 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を 身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲー ムの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が60 分まで(学校等の休業日にあっては、 90 分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の使用に当たっては、義務教育 修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10 時までに 使用をやめることを基準とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければな らない。
3 保護者は、子どもがネット・ゲーム依存症に陥る危険性があると感じた場合には、やか に、学校等及びネット・ゲーム依存症対策に関連する業務に従事する者等に相談し、子ども がネット・ゲーム依存症にならないよう努めなければならない。
引用:香川県庁ホームページより
この“ネット・ゲーム対策依存症条例”では、先ほど挙げたように、ゲームをする時間または使用する時間帯の上限にまで言及しています。
違反をしたからといって罰則があるわけではありませんが、保護者が子どもたちに条例を遵守させるよう努めてほしいと求めています。
香川県が制定したこの条例に対しては、県民や専門家のあいだでも賛否両論あるようです。
「子どもたちにゲームを使用する目安を示してくれてありがたい」と好意的にとらえる人もいるなか、「個人の趣味に行政がそこまで足を踏み入れるのはいかがなものか」「ゲームで暗い辛い気持ちが救われる子どももいる」と、否定的な意見を持つ人もいます。
いずれにせよ、行政機関が条例を制定するほど、ゲーム障害は子どもたちのあいだで深刻化していると考えて良いでしょう。
続きでは、ゲーム障害の診断チェックテスト・ゲーム障害の予防方法・ゲーム障害の治療方法をご紹介します。
全文は教育情報サイト「ソクラテスのたまご」でご覧ください。