専門家が回答⑱「夫婦関係が悪いと、子供にも悪影響あたえますか?」

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富山県こどもこころの相談室

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「夫婦関係が悪いと、子供にも悪影響あたえますか?」

夫婦関係が悪い(夫婦喧嘩を子どもの前で見せる)ことは、子どものこころや脳に大きな影響を与えます。

 

今年の9月に発表された児童虐待の対応件数は、全国で20万7659件(速報値)でした(富山県は894件)。児童虐待と聞くと「叩く」「蹴る」「物を投げつける」等の身体的虐待をイメージする方も多いと思います。

虐待には、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、養育放棄(ネグレクト)の4つがあります。

 

先ほどの数値について、この4つを内容別に調べると、「心理的虐待」が最も多く12万4722件でした。

これは、虐待全体の60.1%となります。

 

*心理的虐待とは

・怒鳴る

・大声や脅しなどで子どもに恐怖感を感じさせる

・無視や拒否的態度を取る

・きょうだいと比較して差別的な扱いをする

・自分の子と他の子と比較し、叱責、嫌味を言ったりする

というようなものが挙げられます。

 

さらに、「心理的虐待」には「夫婦喧嘩を子どもに見せる」ことも含まれます。これを「面前DV」と呼びます。この面前DVの件数が急増しています。

 

子どもの前で、パートナーに暴力を振るうことはもちろんですが、言葉で攻撃をしたり、無視したり、拒否的態度を取ったりすることも当てはまります。

 

「面前DV」を目撃して育った子どもは、脳が変形することが分かっています。

(参考文献「子どもの脳を傷つける親たち 友田明美 NHK出版新書」)

 

脳が変形することにより、子どもは自分の気持ちをコントロールできなくなり、学習意欲も低下し、無気力等の症状が表れます。また、アルコール依存や薬物依存への陥りやすさも指摘されています。

 

よくある相談として

 

・自分の気持ちをコントロールできない

・いつもイライラしている

・子どもが勉強をしない

・宿題をしない

・成績が落ちている

というものがあります。

 

上記の脳の変形のことを考えると、これは、子ども自身の問題だけではなく、子どもの前で夫婦喧嘩を見せていることが大きく影響していると考えられる事例を、私はたくさんみてきました。

 

夫婦は元々、他人ですし、別々の人格なので、常にお互いが理解しあうことは困難です。

「夫婦喧嘩をしない」ということは非常に難しいことですが、子どもの前で夫婦喧嘩を見せないようにするという工夫はすることはできるのかもしれません。

そのようなことについて、コミュニケーションを積み重ねていくことが、夫婦喧嘩のきっかけを少しでも減らしていくのだろうと思います。

 

そして、それは子どものこれからの、心身の発達や健康にとって、とても大切だと思います。

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