「子育ての悪循環」を「子育ての好循環」に変える方法

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富山県こどもこころの相談室 

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親が子どもとのかかわりに方について学ぶ手法に「ペアレント・トレーニング」というものがあります(1960年代にアメリカで研究・実践がスタートされました)。

 

私は、約10年前からこの手法を研究・実践してきました。そして、富山県こどもこころの相談室でも「ペアレント・トレーニング講座」が人気で、子育てに悩んでいる親が参加しています(現在、コロナ禍のため募集を休止中)。

 

ペアレント・トレーニングは発展を続けており、現在は子育てに限らず、保育や教育の現場でも効果的な支援方法として応用されています。

 

今回はこのペアレント・トレーニングについて紹介します。

子育てが上手くいかない場合、日常の親子関係で頻繁に見られるのは

 

子どもがしてほしくない行動をする(ゲームばかりしている)⇒親が子どもを叱る⇒子どもは反発する⇒親はさらに子どもを強く叱るというような展開です。

これは「子育ての悪循環」に陥っており、親のストレスは高くなって、子どもの自己肯定感は低下していきます。

 

ペアレント・トレーニングでは

 

「子育ての悪循環」「子育ての好循環」に変えることを目的の一つにします。

 

「子育ての好循環」とは

 

子どもがしてほしい行動をする(自分から靴をそろえる)⇒親が子どもをほめる⇒子どもは嬉しいのでさらにその行動を繰り返す(次のときも靴をそろえる可能性が高まる)という展開です。

これは「子育ての好循環」で、親のストレスは減り、子育てに自信が出ます。そして子どもの自己肯定感は高まっていきます。

 

「子育ての悪循環」「子育ての好循環」の違いが分かりますか?

 

読み返して、少し考えてみてください。

 

突然ですが、先日、あるニュース番組で「コロナ禍における子どものメンタルヘルス」の特集を放送していました。その放送では「子どもも親もストレスが限界にきているのでちょっとしたことで、怒りやすくなっていると」いうことでした(コメンテーターはコロナウイルスの感染症医だったので、子どものメンタルヘルスについてアドバイスをしていることに私は違和感しかありませんでしたが)。

 

その特集では、親子への街頭インタビューの様子を放送していました。

 

そこである親が

 

「マスクをしなかったり、手を洗うのを忘れたりするんです。それを見たらイライラしてしまって、怒ってしまいます。そうすると、子どももイライラして、口答えしてくるので、余計に大きな声で怒ってしまいます」

 

という家庭での様子について語っていました。

 

これは、先ほどの説明でいう「子育ての悪循環」に陥っています。

 

それでは、この場面を「子育ての好循環」に変えるために、親はどのようにかかわったら良いでしょうか。

 

このようにかかわったら良いでしょう。

 

「時々マスクをしている時」「時々忘れずに手を洗ったとき」(両方とも親がしてほしい行動です)、それを見逃さずに親が子どもをほめてあげることです。

 

このかかわりを増やすことによって、親子の関係は大きく変わります(ペアレント・トレーニングに実際に参加した親が子どもの変化に驚いてプログラムを終えていくこと、統計的なデータにも効果が確認されていること)。

 

子どもが同じ行動をしても、「してほしくない行動」ではなく「してほしい行動」に注目するだけで、「子育ての悪循環」「子育ての好循環」に変えることができます。

 

 

 

 

もう一つの視点の視点をお話しましょう。

 

それは、子どもをほめるためにはコツが必要だということです。

 

今回は5つのポイントを挙げましょう。

  • 子どもの近くで目を見てほめる(離れた場所だと伝わりにくいので、子どもの近くに行き、子どもの目を見る)。
  • ほめるときは言語(マスクして偉いじゃん!手を洗ったんだ、すごいなぁ! など)も、非言語(ハイタッチ、OKサイン、頭を撫でる など)も工夫して使ってみる。
  • 声を明るくする(暗い声や、怒った声ではなく、明るい声で)。
  • 表情を柔らかくする(怒った顔や不機嫌な顔ではなく、優しく柔らかい表情を意識)。
  • 批判や皮肉はNG(偉かったね・・・でもいつもそうやってできるといいね、やればできるんだからこれからはちゃんとやってね。などと言われると、子どもには嫌な気持ちしか残らなくなり、せっかくほめたことが水の泡になります)。

 

ほめることは練習を積むことでどんどん上達していきます(ほめることが苦手な方は俳優になったつもりで、練習をしてみてください。それでもほめることに抵抗がある方は、カウンセリングを利用してもよいと思います)。

 

ぜひ、「子育ての好循環」を意識して、子どもと接してみてください。

 

プロフィール

富山県こどもこころの相談室

代表(臨床心理士) 深澤 大地

 

長野県生まれ。関東の公的機関で教育相談員やスクールカウンセラーとして勤務。平成21年に富山県総合教育センター客員研究主事として招聘。平成29年に子ども専門の心理相談室「富山県こどもこころの相談室」を開設し、主に未就学児から30代までのカウンセリングを行っている。また、講演会、新聞の連載エッセイの執筆、雑誌への記事の掲載、メディアへの出演など、臨床心理士として県内外で活躍中。

 

所属学会等

「日本心理臨床学会」 会員

「日本遊戯療法学会」 会員

「日本箱庭療法学会」 会員

「日本精神分析学会」 会員

「日本学校心理学会」 会員

「富山県臨床心理士会」 前理事

HP:https://cocoro-soudan.wixsite.com/toyama-kodomo
Facebook:https://ja-jp.facebook.com/TCCR556/
Twitter:https://twitter.com/tccr556?lang=ja

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